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オーバーステイの意味とは?結婚と出入国在留管理局、強制送還を解説

オーバーステイとは、ビザ(在留資格)ないし在留期間の有効期限を経過して、合法的な在留資格を持たず、国内に滞在することを意味します。
出入国在留管理局とオーバーステイでの国際結婚の関係は、ネット上にある情報で間違ったまま拡散してしまったものが多くあります。ファクトチェックの際は、「建前」なのか「ファクト」なのかのチェックが重要です。

とはいえ、「オーバーステイってどういう意味?」という方もおられるのではないでしょうか。
本稿以下では、オーバーステイでの結婚と国際結婚手続きについて解説します。

「オーバーステイで結婚できる?」
「オーバーステイするとどうなるか?」

迷っている方や、こうした疑問を持っている方は、ぜひ最後までお読みいただくことをお奨めします。私たちが、実際に受けた2万件以上の相談と経験、知識に基づき、人権救済の見地も踏まえて解説します。

PROLOGUE はじめに

本稿以下は、知識が無い等、心配する国際結婚夫妻等が多く、その結果、「不法滞在」が減らないことを特に問題視し、公益目的にて作成した趣旨でもあります。また、国際結婚夫妻等が、適切かつ迅速な対応ができず、後手に回ったり、判断を誤った結果、永遠に離れ離れになることのないように、啓発する趣旨もあります。

内容は関係者でもあまり知らないような高度なものも含み、レベルを下げないで書いてある側面があります。ネットにある一般的な情報との違いは、筆者は、様々な国際結婚夫妻等から広く相談を受ける立場にあるため、個人的な狭い経験に留まらず、横断的で現場的な広い視点で書ける点にあります。

本稿の内容は、現場的な視点での解説、意外に見落とす盲点等をピックアップし、国際結婚手続全般と、その応用としての「オーバーステイ」を、解説します。ネットにあるような陳腐な内容は省き、現実に役に立つ内容を中心に構成します。政府は不法滞在者を減らすことを唱導してきましたが、入管、市区町村、法務局、外務省、外国公館等はブラックボックスのままとなっています。ネットで解説したサイトは、完成度が足りないだけではなく、根本的に誤っている場合が多く、私たちは20年以上の経験で積み上げたものを解説致します。他方、学術書は、現場に即した内容ではないですし、本稿では入管関係者的にも、あまり意識・認識されていない情報も含むます。
なお、本稿以下は「ビザ」を、原則として「在留資格」の意味で記載しています。

オーバーステイ、入管法違反、外国人の人権

オーバーステイとは、実際の入管での取調べで外国人の容疑者に対して、用いられるときは、不法入国者に対しても「オーバーステイは悪いことだと知ってますね。」、などという用例で用いられており、単に、入管法違反全体を指すような使われ方をする場合もあります。

世間一般には、日本人と結婚すればビザなど許可されて当然、などというイメージもあるのではないでしょうか。しかし、外国人の人権というのは、日本人の半分も無いというイメージが相当なのです。私たちは以前は、「日本人の半分くらいですよ。」という説明の仕方をしていたものですが、最近は「半分もありません。」という説明の仕方に変わりました。

外国人がどれほど人権が無いかの一例ですが、たとえば、ある外国人Aさんが、日本に留学に来て、日本の国立大学の大学院で首席に近い成績を収め、卒業し、日本の大手メーカーに就職が内定したとします。人物的にも申し分のない人でした。ところが、Aさんは、学生のときに、入管の許可を得ないで、アルバイトをしていたのです。実は、外国人留学生はバイトするのも「資格外活動許可」という許可が要るのです。Aさんは知りませんでした。その結果、Aさんは、内定したにも関わらず、入管から不許可とされ、母国に帰国を要求されました。・・・そこまでなら、よくある話なのです。しかし、今度は情状資料等の証拠資料を本人なりに、考えられる限り集め、在留中に再申請しました。ところが、入管は考え方次第で、許可可能にも関わらず、不許可にしました。その背景にはAさんには関係のない、入管の事情が絡んでいたのです。

この設例の場合、Aさんはオーバーステイも不法入国もしていません。ただ、アルバイトをしただけです。それどころか、非常に優秀な人です。いわんやまして、不法残留や不法滞在はどうでしょうか。上記の事例は先例的には許可した例はあるのです。しかし、入管は先例拘束性が弱い官庁です。

「上が変わると、前はOKだったのが今はダメだ、というようなことはあっちゃいけないなんだけどね・・・。」とは、ある入管の現場職員の話ですが、「上」とは「上司」のことを指し、上司の指令次第で、翻弄される現場を皮肉交じりに表現したものです。入管は法務大臣を頂点とし、法務省本省の長官、課長、地方局長、次長といった「上」が君臨し、現場の審査官が「OK」を出しても、「上」がひっくり返すこともあるのです。
逆に上司はほとんどハンコを押すだけで、もっぱら担当官だけで決めている場合もあります。

したがって、オーバーステイ事案では、決して油断は許されず、考えられる限りの証拠資料を用意し、入管と「裁判」をする(かのような)つもりで臨まねばならないのです。但し、実際に裁判になっては、実効性や実際の生活のうえで意味がないので、いかにもめ事にならないように事前に予防するかが大切なポイントです。

オーバーステイでの初婚・再婚と出入国在留管理局の扱い等

:国際結婚をする場合、相手方が初婚の場合もあれば、再婚の場合もあると思います。ところが、現在の結婚は真実でも、前の結婚に問題があった場合やオーバーステイが絡むときはどうでしょうか。オーバーステイには、現在進行形のオーバーステイと過去のオーバーステイと両方あります。また、現在日本にいるのか、海外にいるのかでも異なります。各々、どう違うのか、その場合の入管での考え方はあまり知られていません。以下、前婚も日本人として、場合分けして考えます。また最後に初婚での場合を挙げます。

類型A:前婚が仮装婚で、後婚時、海外にいる

類型B:前婚が仮装婚で、後婚時、日本にいるが、不法滞在

類型C:前婚が仮装婚で、後婚時、日本にいるが、適法滞在

類型D:前婚が真実婚で、後婚時、海外にいる

類型E:前婚が真実婚で、後婚時、日本にいるが、不法滞在

類型F:前婚が真実婚で、後婚時、日本にいるが、適法滞在

類型G:初婚で、初婚時、日本にいるが、不法滞在

ABCで前の婚姻が解消されていない場合は、いずれも、婚姻無効の確認等が必要となる場合があります。実際の手続では、仮装婚の相手方から脅迫される等の状況も事例では存在します。
中には、仮装婚といえども、人身売買の被害者で、強制結婚させられているケースもありえます。
前婚が解消できない場合に、現在の婚姻が真実であるというとき、真実名では婚姻できないので偽名で婚姻する等のケースが実在します。これは入管法プロパー以外の犯罪になり、検挙された場合には、ただのオーバーステイでは済みませんので、真正面から困難かつ適法な手続に立ち向かうしかないのが実際のところとなります。

DEFは、一見まだベターなようにも見えますが、オーバーステイではないDやFの事案ですら、前婚の離婚の経緯が問題になることはありますし、その結果、「婚姻の信憑性(or安定性)が認められません。」等との理由で不許可になることもあります。前婚の離婚の証明書は要求されることが多いです。

EとGはいわゆる「オーバーステイ」事案ですが、その内容は多様です。不法入国(入管では、わかりやすく言うため、それも「オーバーステイ」と言う場合があります。)か不法残留か、在宅案件か、収容案件か、婚姻先行か摘発先行(駆け込み婚)か、婚姻はいつ可能か、同居はいつか、入管の動向はどうか、等の種々のファクターで多くの組み合わせがあり、類型化が必要です。

他方、AとDのように、現在、相手が海外にいるときは、基本的には、「認定」(=COE=在留資格認定証明書)を申請することになるでしょうが、上陸拒否等の事由、つまり本人の履歴等に留意が要ります。具体的には過去に「オーバーステイ」等の「好ましくない在留」がなかったの確認が必要です。
この点、過去に「オーバーステイ」があって、出国命令で出国した場合に、「1年で戻ってこれるから大丈夫」とか、退去強制で出国した場合に、「1年で戻ってこれる」と「入管職員から言われて」いることがあります。実際は出国命令で出国した場合に、「1年で戻ってこれる」は権利としては、保障されておりません。出国命令制度のよくある誤解になります。退去強制の場合はなおさら「1年で戻ってこれる」ではないことになりますが、これもよくある誤解で、入管職員は、帰国して欲しいので色々と現場では、帰国を誘導するような発言をするものなのです。

BとEとGのように、現在、不法滞在の場合、入管に出頭申告をし、在留を請願することになるか、出国命令を希望するというのが制度設計です。

CとFは似ているようですが、類型Cの場合、その在留はいわゆる表見的に適法なだけで、実質的には違法な在留と評価可能です。したがって、類型Cは、違反事案、すなわち、類型Bに準じて解することが可能です。なぜなら、検挙されば、処罰後に更新申請等が不許可となり、不法滞在に至ることがありうるためです。

これと対比して、類型Fの場合、真実婚であったとしても、前婚の実体の後発的喪失と後婚の在留資格への移行では、かつては待婚期間の問題が生じることがありました。再婚禁止期間は現在では問題にならないかのように見えますが、国際結婚では外国政府の扱いも絡むので、外国政府の決まりで、結婚するための書類を発給しない場合には、通例は結婚できません。したがって、完全に消滅したトピックにはならないと思われます。
また、類型Fの場合、離婚しただけでは、公定力理論によって、日配(配偶者ビザ)の在留資格は失いませんから、在留は直ちには違法にはなりませんが、「好ましくない在留」にはなりうるのと、取消制度は日配(配偶者ビザ)も射程となっていることに注意致しましょう。ちなみに、前婚の実体が後発的に喪失したのに、法律婚だけ維持し、かつ婚姻が正常な関係であることを装って(=事実と異なる=虚偽の)更新申請をするのは、通常は、更新許可できるような該当性がありません。また虚偽申請になるので、違法です。にも関わらず、仮に更新許可されてしまった場合には、正しく審査できなかったことになるので、取り消しの余地があり、かつ、取り消しされない場合でもその後の在留審査にマイナスの影響を与える場合があります。
そのうち入管から呼び出しされる等で最悪の事態になりうるので、その場しのぎは避けることが本来は必要なところです。

○まとめ
以上のように、オーバーステイが絡んで結婚をする際には、相手方の状況を、ケースごとに、類型化(カテゴリー化)し、どのような状況かを見極めることが大切なポイントです。

出入国在留管理局の概要とオーバーステイの位置づけを部門でわかりやすくイメージ

:ベールに包まれた出入国在留管理局。その中身はどうなっているのでしょうか。オーバーステイに限らず、関わるところですので、最も大規模な東京出入国在留管理局での主な概要や施設を示しておきます。

1F

*コンビニとイートインスペース(元「喫茶店」)

:イートインスペースは元「喫茶店」でした。その喫茶店のメニューですが、開局当時は食事もあったのですが、段々とメニューが減ってきて、最後はイートインスペースになりました。意外に東京入管の中では、食事の店舗としては営業が困難なようです。外国人が多いので、メニュー選定が困難なのかもしれません。
:この近くは飲食店がほとんどなく、お昼のお奨めは、入管の裏側のレストランです。

*インフォメーションセンター

:ごく一般的なことのみのインフォメーションです。プロはビギナー以外はほとんど行きません。入管は事前の話と実際の結果が違う、という話を、よく相談されますが、その一つの原因はこの「インフォメーション」にあります。

*オーバーステイ等での帰国希望者の出頭申告関連窓口

:いつも殺伐としています。

*被収容者との面会受付

:混んでいるかはその日によります。オーバーステイ等で収容されている場合には、この面会受付にて面会を申し込みます。面会申出書の記載内容も後日、審査官にチェックされる場合もあるので、しっかり正確に書いていきましょう。

2F

*永住審査部門、留学審査部門、研修・短期滞在審査部門、就労審査部門等。

:国際結婚の担当部署は一般には、「永住審査部門」です。しかし、「日本人の配偶者等」は「永住」の在留資格ではありません。
:オーバーステイでの国際結婚では「永住審査部門」では(現在海外にいるケースを除き)手続きを行いません。ですので、オーバーステイでは「永住審査部門」は関係ないかのように見えます。しかし、イミグレーション実務の配偶者ビザ案件は、(1)ビギナーレベル(2)ミドルレベル(3)アドバンスレベル、と分けた場合、

(1)ビギナーレベル
全く無問題の正規在留申請での配偶者ビザの申請(例、在留期間更新申請、在留資格変更許可申請、在留資格認定証明書交付申請、在外公館での査証申請)=「永住審査部門」や「在外公館」
(2)ミドルレベル
何か問題のある正規在留申請での配偶者ビザの申請(手続き種別は同じ)=「永住審査部門」や「在外公館」
(3)アドバンスレベル
オーバーステイでの国際結婚に基づく手続き=「調査部門」、「違反審査部門」、「審判部門」。難民案件では、「難民調査部門と審判部門」。

となります。したがいまして、現場経験として、(1)(2)をしっかりマスターしないと、仮に免許持っている有資格者でも、(3)は本来は関与するべきではないはずです。
ところが、この場合に、よく現場では、(1)(2)の経験が皆無か、十分ではない、あるいは、「普段の本業」にしているとは言えないのに、(3)に関与する実務者が存在します。
なぜ(1)(2)をしっかりマスターしないまま(3)に入ると危険かですが、たとえば、(3)アドバンスレベルであっても、核心部分は配偶者ビザです。在留特別許可の結果出てくるのは、配偶者ビザだからです。そして、配偶者ビザの経験や知識は、最も重要なものは、決して(3)アドバンスレベルではなく、(1)(2)の経験から得られるものだからです。具体的には、(3)アドバンスレベルの全体の中での統計上の少なさもあり、そもそも数量的に正規在留の審査(永住審査部門)のほうが圧倒的に多いのです。得られる経験の質も量も多いものになります。これは入管職員側も同じで、実は3階より上の階の職員は、配偶者ビザは、「本来の専門ではない」のです。「本来の専門ではない」部門の職員を相手に、(1)(2)をしっかりマスターしていないような、現場技術者が関与してもいい結果は出ないし、いい学びもできないことが容易に予想されるのではないでしょうか。

さらにビザは配偶者ビザだけ独立に存在しているわけではなく、配偶者ビザ以外の、就労ビザや留学ビザなど、広汎なイミグレーション制度を理解し、日頃から申請現場にいない限りは、十分に理解したことにはなりません。

そして、(3)アドバンスレベルでは、配偶者ビザを不許可にしたところで、入管は通例は理由は言いません。理由を言わない現場に立ち会っていても、学びの機会は極めて限定的です。それにそもそも不許可になったということは致命的な失敗をしている可能性があるという意味ですし、(1)(2)は再申請が正規在留申請で可能ですが、(3)アドバンスレベルでは、「やり直し」は普通はできません(実効性はさておきの再審や難民を除く。)。
以上から、(1)(2)をしっかり研鑽したうえで、(3)の現場で対応能力を磨き上げるのが理想的です。

一般的に、国際結婚でオーバーステイしているというご夫婦のケースで、当事者に配偶者ビザの正規在留の申請と審査経験がある、というケースは少ないです。
以上から、オーバーステイで国際結婚するケースでは、(1)(2)(=入門レベルや基本レベル、通常レベル)をいきなり飛ばして、(3)アドバンスレベルの応用問題に関わることになることをよくご理解頂く必要があります。具体的には、(3)アドバンスレベルの話以前に、まず、配偶者ビザ一般の正規在留の審査でどういう問題があるのか、なぜ正規在留の審査で不許可になるのか、それを先にマスターして頂く必要があります。なぜ正規在留の審査で不許可になるのかについては、このサイトの随所で記載しております。
正規在留の審査には様々なルールや決まりや運用と現場の慣行があります。正規在留の審査で不許可になるものが、オーバーステイで許可になるということは、一般的な場面で言う限り、通例は、ありません。

このように、有資格者は勿論ですが、入管が「本業ではない方」なら、なおさら、まずは配偶者ビザのベーシック、つまり、正規在留審査の場合の扱いをマスターし、次に応用である非正規在留審査のテーマに入りましょう。

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3F

*難民調査部門等

:3階以上の階が、いわば「(3)アドバンスレベル」の位置づけになります。
:3階から5階は一般の方はほとんど来ません。そもそも、3階以上は原則「立ち入り禁止」になっていた経緯です。難民調査部門には、難民認定申請関係で行きます。隣の難民審判部門では、難民審査請求の案件で係属することになります。難民案件は退去強制令書発付前か後かで次元が異なりますので、オーバーステイ国際結婚の場合、退去強制令書発付前か退去強制令書発付後かを見極めることが大切なポイントです。

4F

*総務課等

:総務課は入管の中では、ある意味、最も「市役所的な雰囲気のする」例外的な部署です。

5F

*調査第一部門等

:摘発等です。5階に関わる当事者は、刑事事件経由の方や摘発されたお店の関係者等です。

6F

*調査第三部門、違反審査部門、審判部門等

:オーバーステイでの出頭申告で在留を希望する場合や、摘発された人が最終的に審査されるのはここです。

7F

*処遇部門、執行部門、面会待合室等

:基本的に、処遇は施設内での身柄の管理等、執行は現実に帰国させる部署です。

8F以上

:収容施設や職員用の食堂等があります。

オーバーステイ・不法滞在と退去強制手続

オーバーステイとは不法滞在という意味です。基本的には、入管法に規定されている流れによって調査、審査されます。
まず、調査等の端緒は、警察が職務質問等で摘発したものを入管へ送る類型や警察と入管の合同での摘発した事案があります。「出頭申告」もこの端緒に含まれますが、出頭申告には在留を希望する場合と、帰国を希望する場合の双方を含みます。

最初にある入国警備官の違反調査の段階は、オーバーステイで在留を希望して出頭申告する場合の担当は、東京入管の場合、調査第三部門の出頭申告の担当です。この点、一般的な説明では「収容」されるとありますが、これは全件収容主義の原則を示したものです。あくまで自主的に出頭した出頭申告の場合にまで、常に必ず、実際に収容していては、萎縮効果を与え、出頭する人も少なくなり、ひいては、不法滞在者数を減らすという行政側の政策目標の達成も困難になります。そこで、状況、経緯、供述内容や持参した資料等の事実関係、及び入管側の保有情報を吟味したうえ、収容するかどうかを判断されます。

この退去強制手続をみるとき、いわゆる在宅案件と収容案件では、行政手続き的には共通の流れなのですが、実際には、大きな差異があります。たとえば、オーバーステイで出頭申告の場合、在宅案件になると、調査部門ないし警備部門に長期間、案件が置いておかれることがよくあります。調査部門ないし警備部門にどの程度、係属しているかは、20年以上の現場でみますと、案件内容とその時期のその入管の当該部門や担当官次第で、ほぼ全くバラバラです。

他方、収容案件の場合で、オーバーステイで収容して早々に帰国希望するような場合、特別審理官の段階まで行かないのが通例です。また、収容案件と在宅案件とでは、この審理の中身が概して違います。なお、「在留特別許可という申請」は、「申請」という形態では存在せず、法律上、必ずしも正面から規定されているものではありません。いわゆる「在留特別許可」とは「退去強制手続」の過程で行われるものなのです。しがたって、退去強制されたくなくとも、手続きには「退去強制手続」を受けざるを得ないのです。

また出頭申告してもそれだけでは、オーバーステイ、つまり不法滞在のままです。この段階で摘発を受ける人は珍しくもありません。「摘発」するのは、入管と警察とは別であって、両方独立して活動しているのです。

国際結婚とオーバーステイ

-在留特別許可のBuilt-in stabilizer機能-

:出入国在留管理局で配偶者ビザを在留特別許可で得るにはどうすればよいか。

オーバーステイでの配偶者ビザは、不法滞在が犯罪ないし法令違反であって、その中で退去強制手続きを実施し、法務大臣が裁量権を行使して例外的に許可する場合があるに過ぎない、特例の例外的制度だというのが、入管法と入管の公式解釈になっています。政策的理由としては、そのように厳格に解釈しない限り、誰もビザや在留期限を遵守しなくなるから、という実質的な理由もあります。したがって、在留特別許可が「申請」になっても、例外的な措置という位置づけに変わりはないと解されます。
ところで、Built-in stabilizerというのはご存知でしょうか。財政学の用語で、自動安定装置のことです。この点、在特はBuilt-in stabilizerであると表現することもできます。つまり、無くてはならぬ入国管理制度に取り込まれた安定化装置です。この安定化装置は、「建前」は別として、数量的なものと、過去の経緯からみて、「主に」、国際結婚の事案を射程としているということも可能です。但し、オーバーステイには、意図的なもの(故意)と、過失と二種類あります。過失と故意では評価が全く違うことも理解しておく必要があります。

[オーバーステイの出頭申告についての全体像]

以下では、婚姻手続を中心とするオーバーステイの出頭申告について、全体像を概説致します。ただ、あまり煩雑で専門的なことを申し上げても、いかがなものかと思われますので、要点をまとめるという視点で申し上げます。なお、婚姻手続のみならず、入管への出頭申告手続も加味して、説明致します。また、全て一般論で、入管の分野では、何事にも例外はあることにご注意下さい。

[一般的な全体の流れ]

オーバーステイはそれ自体が犯罪そのものであり、入管が「申請」制度にしたところで、犯罪(の構成要件に該当していること)に変わりません。本稿では、オーバーステイで入管が「申請」制度にした後に、今後どうなるかという予測も含めて記事に致します。
現場の申請技術者として申し上げますと、入管では「申請」かどうかは、実態として、さほど重要ではなかった経緯もあります。たとえば、難民認定「申請」は「申請」ですが、実態としてほとんど認定(許可)されていません。したがって、あまり「申請」という表現に惑わされるべきではないでしょう。
以下では、「申請」という表現を用いますが、改正法施行後と改正前と現場運用の「本質」が大きく変わることはないと予測して記事にします。

オーバーステイで入管が「申請」制度にした後、まず、入管への出頭申告の扱いがどうなるのかという問題があります。ですが、オーバーステイはそれ自体が犯罪であることを踏まえると、「遅滞なく出頭申告下さい」という入管の立場に変更はないと予測されますし、警察が逮捕しうる対象であることに変更はないと予測されます。なぜなら、さもなくば、誰も在留期限など遵守しなくなるからです。逮捕された場合、昔は、多少長い残留でも、単純不法残留の初回では、入管出頭前に摘発されても、起訴されずに、数日等で入管へ行く扱いが、都市部ではよく見られましたが、昨今はそうでもありません。起訴され、普通に懲役刑で、前科が付くことが実施されています。

それはさておき、何かを「申請」するには、「申請」する資料が必要です。
ここで、配偶者ビザの核心部分については、正規在留と本質は変わりありません。

この点、正規在留では、結婚して入管に配偶者ビザを申請するには、先に日本で婚姻する案件の場合、

→外国人側の婚姻要件具備証明書等のための基礎資料の収集
→入管用の資料も準備
→(婚姻要件具備証明書等を駐日外国公館で発行しない国の場合、必要に応じて)国籍国の政府機関にて婚姻要件具備証明書等の申請と受領
→(婚姻要件具備証明書等を駐日外国公館で発行する国の場合、必要に応じて)当該外国大使館領事部等にて婚姻要件具備証明書等の申請と受領
→市区町村にて創設的婚姻届出(※当該外国大使館領事部等の外国政府側への報告的婚姻届出は相手国の制度で可能な場合は実行)
→入管での在留希望での「申請」

という流れです。

この点、オーバーステイで入管が「申請」制度にした後に、今後、「申請」後の扱いが、どうなるかですが、正規在留申請では、元々、入管では、資料提出の「指示」をするケースもあれば、「指示」しないまま、いきなり不許可にするケースもあり、それは非正規在留で「申請」制度にしたところで何ら変わるとは思われません。
また、従来、「指示」があっても、許可するための「指示」ではなく、不許可にするための「指示」だったり、十分な「指示」ではないことが普通にあります。
したがって、「指示」待ちがNGであることについては、正規在留申請と同様であり、自ら立証を考えて行くことが大切なポイントになります。

→以上の点を踏まえたうえで、「指示」の有無に関わらず、立証する適切な資料を入管に提出となります。
他方、正規在留審査では、「標準処理期間」というものがあり、オーバーステイで入管が「申請」制度にした後に、「標準処理期間」が導入されるかという問題があります。「標準処理期間」が正規在留並みに導入されれば、数か月のスパンになりえますが、オーバーステイに「標準処理期間」が馴染まないとなれば、従来どおりとなります。

そこで、従来ですと、これも20年以上の現場で指摘すると、オーバーステイでは、「ほぼ合理的理由なくバラバラ」なのが実態です。途中の審査での呼び出しや実態調査はさておき、最終的に、
→1か月後、数か月後、半年後、乃至、1年後(状況により変動しますが1年を超すのは統計的には少なくなります。)に入管から呼び出しがあり、裁決の告知(在特こと在留特別許可の場合、この日に在留許可)。

→お住まいの市区町村の役所にて住民登録
※「外国人登録」制度は、住民登録制度に吸収されています。

[各場面での手続の詳細]

各場面での手続がどのようなものか、より詳しくみていきましょう。

外国人側の婚姻要件具備証明書等の資料の収集

:過去約20年、外国側の書類は、その国その国で、様々な変遷を重ねてきました。例えば、外国大使館・総領事館の(外国人側の)婚姻要件具備証明書やそのための資料は、オーバーステイの有無、旅券の有無、外国人側が未婚か再婚か、等々で違いを生じてきました。
:一般的に、国際結婚では、まずは、当該大使館領事部に問い合わせが推奨されます。理由は時期によっても、応対した係員によっても、頻繁に変動するからです。外国公館や外国政府の取扱は、入管も、保証できるような回答はできません。外国政府は日本政府とは考え方が異なり、旅券が無いときやオーバーステイのときには、婚姻要件具備証明書を出さないと言われることもあります。

○本来の婚姻要件具備証明書がない場合
では、本来の婚姻要件具備証明書がない場合はどうでしょうか。一部の国では、本人が帰国しない限り、全く結婚する手段がない場合もあるのですが、大半の国では何らかの方法があります。

以下、便宜上、「中国」を念頭に置く場合がありますが、要点やポイントや考え方は、他国の場合でも大きくは変わりませんので、読み飛ばされないことをお奨め致します。
一例として、中国ですと、

*「国籍公証書」
*「出生公証書」
*「未婚公証書」

といったものが代表的です。中国以外の国でもベーシックな考え方は同じであり、これを「国籍・出生・独身」の三点セットなどと言います。但し、中国に限らず、必ず入手できるとは限りません。「未婚公証書」などは、過去約20年でみると、中国の地域にも拠るのですが、段々と取得しにくくなった経緯があります。

[注]
一般に外国国内の証明書類は、現地の政府機関で発行します(例、公証書は中国の場合、地元の公証処で発行します。)。これは、一般には、現地の親族が代わって行います。詳しくは、外国人側が、現地の親族を通して、入手を依頼し、日本までEMS等で郵送するのが一般的です。なお、できれば、婚姻届用、入管用、に、最低2部ずつ入手しておくようにお奨めするケースが多いです。前回の発行より3か月後、などの一定期間経過後でないと新たに発行されないと言われたケースもありますので、いつでももらえるわけではないため、もらえるときに、入手しておくこともポイントです。また、これらの公証書等の証明書は、まず、最初に入手に取り掛かることが一般的には、オーバーステイかどうかに関わらず、国際結婚手続きのベーシックです。

また中、公証書等の証明書は、現地では案外、「レアな書類」だったりします。国際結婚でしか使用しない書類の場合もあるためです。ですので、リクエストする日本人側でどういう書類が要るのか正確に把握したうえで、外国人側に伝えることも大切です。

○駐日の外国公館側で婚姻要件具備証明書等の何らかの独身証明書を発行する場合
次に駐日の外国公館側で婚姻要件具備証明書等の何らかの独身証明書を発行する場合にはどのような扱いがあるのか、前提として何が必要か、みていきましょう。但し、実際は各国でバラバラ、かつ、20年の経験でみますと、そのときそのとき(時期)でもバラバラ、たまたま担当した担当官でもバラバラ、です。そこで、最大公約数でこういった場合があるとの経験から来る記事になります。

*旅券(パスポート)
:結婚するための書類の発行の前提として、旅券(パスポート)が無い場合は先に作るように求められる国があります。ところが、オーバーステイでは、旅券(パスポート)の作成を拒否される国もあります。旅券(パスポート)が作成されない場合に、どうやって帰国するかですが、旅券の変わりに一時的な渡航証明書(国により、A4サイズ紙1枚など)を発行してそれで帰国するようにと指示される国もあります。

*在留カードないし住民票
:駐日の外国公館側ではオーバーステイ者のことは、あまり想定しておらず、在留カードないし住民票をリクエストするケースがあります。オーバーステイではそれはありませんし、入手できませんので、それでどう対応するかは、駐日の外国公館側の担当官次第になります。

*国籍国の本国政府機関が発行する独身証明書や出生証明書等
:駐日の外国公館側が何か書類を発行する前提として、本国の現地政府の機関が一定の書類を発行することが必要な国があります。

*「陳述書」等の申請書
:駐日の外国公館側を訪問した際に指示される例があります。内容はなぜオーバーステイしているのか等を書かされたケースもあります。国や時期で要否も異なる書類です。その結果、オーバーステイを非難されて婚姻要件具備証明書をくれなかった国も実在します。これはその国の政府と日本政府との関係性が関係するのですが、国によっては、日本政府に「忖度」を行い、オーバーステイ者に対しては、自国の国民に対し、ほとんど領事サービスを提供しない国があります。これは逆の立場でみると、日本人がある外国でオーバーステイしているときに、その国にある日本大使館に領事業務を求めても相手にされないということと同じ意味になります。

*「日本人側の婚姻要件具備証明書」
:「日本人側の婚姻要件具備証明書」を求める場合があります。「日本人側の婚姻要件具備証明書」に外務省の認証印(アポスティーユまたは公印確認)が要る場合もあり、その場合には、外務省の認証印は、発行された証明書を「外務省 領事局領事サービスセンター 証明班」に持参等することで、押印されます。

*「日本人側の離婚届記載事項証明書」
:日本人側に離婚歴がある場合、必要な場合があります。これも外務省の認証印(アポスティーユまたは公印確認)が要る場合があります。

*「外国人側が日本で婚姻していないことの証明書」
:日本の市区町村から取得が必要な場合があります。特殊な書類ですので、市区町村側の理解を得る必要があります。

*「同じ国の同国人による保証人」
:同国人1~2名が、パスポートと在留カードを持参のうえ、夫妻とともに出頭し、大使館や領事館にある用紙に保証人となる旨を記入し、署名捺印する、といった扱いの国があります。

入管用の資料の準備

:入管用の資料の準備が、このオーバーステイでの在留特別許可手続の一番重要な部分です。これについては、別頁でも解説していますので、ここでは概説致します。

まず、陳述書は積極的に書くことです。オーバーステイでは、陳述書は二種類あり、各々の地方局が管理する陳述書と、当事者が任意にフリー形式で作成する陳述書です。後者のことを理由書とも言います。さらに、履歴書や職務経歴書のようなものも、案件によって、作成を検討するべきです。また、一般に言われる嘆願書、上申書は行政手続き的には、この場面では、私たちは、請願法による請願書と解するのが相当と位置づけることもありますが、その中でも日本人側配偶者のそれについては、供述録取書的形態で作成する場合もあります。供述録取書は本人と第三者の録取者の組み合わせで作成します。
理由書や供述録取書はA4サイズで詳細に書きましょう。最初の出会いのきっかけのやりとりだけで紙幅を割くこともあります。入管の世界では「出会いのきっかけ」は非常に重要な概念です。なぜなら、オーバーステイでは、ここを仮装する例が多く、またここを追及すればホコリが出てくることが経験則上多いことを審査官も承知だからです。

また、配偶者及び配偶者以外の請願書についても、漫然と単に請願するだけではなく、然るべき詳細な説明を盛り込み、理由を詳しく書き、他の資料と体系的・有機的に連動させ、編集したものを用意し、レイアウトにも注意し、入管の情状効果をも考えて設計し、よいものだけを選び、出すことが重要です。

なお、入管職員に限りませんが、一般に許認可を審査する行政機関は、内規のマニュアルに従っているだけで、その狙いは、仕事の量を抑制しつつ、行政機関の許可・不許可の裁量の範囲を最大とすることを目的としているに過ぎず(中途半端な資料であれば不許可の理由を探し易い。また、いい加減な資料のまま、いい加減な資料だと承知で敢えて受け付けるのは、不許可にするときの根拠を予め確保しておく目的と解される。)、許可するかどうかは配慮していません。このことは、オーバーステイのような違反案件では特にその傾向があります。たとえば、同じイミグレーション業界であるアメリカビザもそうです。米国政府サイトに審査で使う書類が書いてありますが、それだけ出せば済むのであれば、「アメリカ ビザ 面接 落ちた」で検索されることもない次第です。

市区町村にて婚姻届出

:次に駐日の外国公館側や、外国政府機関側で婚姻要件具備証明書等の何らかの独身証明書を発行した後、日本の市区町村で婚姻届出する場合にはどのような扱いがあるのか、前提として何が必要か、みていきましょう。
但し、実際は、20年の経験でみますと、各市区町村でバラバラ、しかも、各地域や国の組み合わせによって異なり、さらに時期や担当職員や、管轄の法務局戸籍課職員と市区町村の戸籍の職員との間の連携の内容、等によっても異なる状況が存在します。そこでこの記事は、最も共通する要素に基づいて経験をもとにまとめられています。

:この場面での書類は、一般的には、

*上記の大使館等の外国政府機関が発行の(外国人側の)婚姻要件具備証明書等の独身証明書(日本語翻訳文添付のこと。)
*旅券(パスポート)
*旅券が無いときは、外国政府機関が発行の国籍証明書(上記と同じもの。但し、日本語翻訳文添付のこと。)、
*外国政府機関が発行の(外国人側の)出生証明書(日本語翻訳文添付のこと。)
*婚姻届書(分かりにくい点は未記入のままで可。)、
*本籍地以外に出すときは日本人側の戸籍全部事項証明書、
*日本人側の運転免許証等の本人確認書類、
*日本人側のハンコ(認印で可)、

です。

婚姻要件具備証明書を認められる場合には、出生証明書は要らない場合がありますが、国際結婚は入管だけではなく、市区町村も「審査」を行っているのが実情であり、結婚を認めるかどうかを市区町村と法務局で、実際上、判断します。地方自治法上は、市区町村が判断する建前ですが、実際は法務局が最後に決めます。そのため、法務局に受理照会になりますと、混み合う法務局では1か月以上かかることもあり、中には1年以上審査していたケースもあります。以上から、受理照会にはならないよう、できる限り、即日受理になるように、事前にきちんと調整のうえで、準備することが大切なポイントです。

婚姻届書の用紙は日本人同士の婚姻届書と国際結婚では共通です。証人二人の欄は、特に制限はありませんが、一般にはご親族が推奨です。また、婚姻届書の「(5)同居を始めたとき」は実際に同居開始した月を記入するものです。オーバーステイの案件では、婚姻届書の内容や市区町村職員とのやり取りの内容までが審査対象になり、婚姻届書など、一見すると書き方など関係ないように見えますが、現場ではそうでもなく、適切かつ慎重に記載が必要です。

なお、各種証明書は、この後の外国大使館・総領事館ないし本国政府機関への(報告的)婚姻届出の際にも使う場合がありますし、さらに、入管でも使う場合があります。このため、市区町村では、なるべく、窓口で原本照合し返却を希望することが推奨されます。但し、個別の案件でどの範囲の書類を返戻(へんれい)するかは、市区町村の裁量になります。

オーバーステイでの手続きである在留特別許可の許可率の真実とは

:入管は裁判所ではありません。しかし、行政機関の中で裁判をするような覚悟で臨まないと、後日、かえって苦労されるケースを多数みてきました。例として、約10年前に自主(≒自首)的に出頭申告して不許可になり、未だに約10年、仕事もできない仮放免のまま(10年の間に3回収容。)という日本人との「普通の結婚」の案件があり、マスコミで報道されている日本人と結婚しても10年以上、仮放免等の話は、普通に存在する本当の話です。在留特別許可は資格試験ではないのですが、世間一般の許可率(合格率)は、時期や地方局にもよりますが、資格試験並です。

では早速、政府統計をみていきましょう。まず、コロナ禍中は、異例の措置がなされていたために、コロナ禍が終わった今後は参考にはなりません。コロナ禍の直前でみましょう。また地方の小規模入管の数字は母集団が極端に小さく、統計学的に参考になりません。母集団の大きい東京入管でみましょう。

地方出入国在留管理局管内別 退去強制手続の受理及び処理人員
東京
違反調査
受理
19,584
異議申出
1,891
既済
1,425
在留特別許可
836

※引用 総務省統計局e-Stat『地方出入国在留管理局管内別 退去強制手続の受理及び処理人員』

2019年の異議申出の既済件数1425件の「事実上の申請」に対し、在留特別許可は836件。許可率は58%です。概ね2人に1人と言えるでしょう。しかも、在留期限を忘れてしまい、うっかりオーバーステイしただけの、悪意のない過失のオーバーステイも含まれることに注意することが重要です。意図的なオーバーステイの場合は、2人に1人も「合格」になっていないと思われます。数字の読み方ですが、エクセル表にある、違反の全件では、19584件です。19584÷836=4.2%ですので、違反者のうち在留特別許可はわずか4%です。これでわかりますが、入国警備官にとって、在留特別許可の案件は、あくまでも日常業務の中で、「4%」の例外だということです。

次に入管は元々帰国を勧奨する立場ですが、とりわけ、初期段階や途中で見込みがない案件は入管では、積極的に帰国勧奨をしており、エクセル表でわかりますが、段々と下のほうに行くに連れ、数字が激減しています。このため、「異議申出」の「事実上の申請」の段階である程度、「絞り込まれた」り、当事者が自ら、事実上の「取り下げ」をしたうえでのこの数字ですので、重く受け止める必要があるのではないでしょうか。

オーバーステイでの在留特別許可は、プロ(行政への申請技術者)が関与しても、ハンパなことをすると、直ちに退去に直結するという危険な手続きだという位置づけになります。

入管での在留希望での手続きと入管法の新しい改正法について解説

:これについては、メインになる手続です。
:オーバーステイで入管で在留希望をする場合、出頭申告だけが端緒とは限りません。既に仮放免されている状況で初めて知り合ったような事例もあります。仮放免には、収容令書での仮放免と、退去強制令書での仮放免と二種類あります。入管で、在留特別許可が「申請」になっても、退去強制令書が出ている場合には、厳しい措置が予想されます。いずれにせよ、申請技術的には、「初動」がとりわけ重要で、枢要部分を占めます。「初動」とは一番最初の入管へのアプローチであり、基本的に一回目の証拠提出とコンタクトを指します。「初動」で十分な対応ができない場合、後でリカバリが困難となります。
以上のように、行政手続きの許認可でも、裁判でも、提出する証拠資料や申立の内容と立証が大切です。

:以下では、手続きの概要をみていきましょう。

オーバーステイ(不法滞在)による在留特別許可の「申請」を希望する場合は、出入国在留管理局で次の手続きを行います。

在留特別許可の「申請」

入管の歴史では、オーバーステイでの在留特別許可の「申請」は、「存在しない」とされてきました。在留特別許可の「申請」という仕組みになった後は、出入国在留管理局で在留特別許可の「申請」を行います。
「申請」と呼称する以上は、「申請書」に相当するものに一定の事項を記入し、証拠書類を添付して提出するという、正規在留申請に類似の場面が想定されます。また、従来は「容疑者」と呼称されていたものが、「申請人」という表現になる余地もあります。立証資料は、申請人の状況により異なりますが、原則として、基本資料では、旅券(パスポート)、身分証明書、経済状況証明書等が必要になることについては、正規在留申請と共通になります。

違反調査・違反審査・口頭審理と改正法

在留特別許可の「申請」になった後に、退去強制手続きとの関係性がどうなるかはさておき、オーバーステイでは退去強制手続き自体は理解しておく必要があります。

例えば、難民認定申請という制度がありますが、難民認定申請手続きと退去強制手続き自体は、別途に併存して進行します。在留特別許可の「申請」になっても、難民認定「申請」のような「申請」だとすれば、「申請」という語句にあまり意味はないともいえます。
しかし、難民認定「申請」と「退去強制手続き」はこれまでも実際は連動してきたため、在留特別許可の「申請」になった後も、退去強制手続きと在留特別許可の「申請」は、「連動」すると解されます。

具体的には、改正法では

2 ・・・申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。
3 在留特別許可の申請は、当該外国人に対して退去強制令書が発付された後は、することができない。
4 在留特別許可は、当該外国人が第四十七条第三項の認定若しくは第四十八条第八項の判定に服し、又は法務大臣が前条第三項の規定により異議の申出が理由がないと裁決した後でなければすることができない。

※引用 衆議院

とあり、従来と「実態」は変わっていないように見受けられます。ただ「監理措置」は新概念になるわけですが、「監理措置決定を受けた外国人」と書いてある以上、「監理措置」の中での「監理人」の役割との絡みで、在留特別許可の「申請」が関わる場面が出てくることが予想されます。しかし、従来の現場を踏まえると、「監理措置決定」があってもなくとも、実質的に(「申請」はさておき)審査はもう始まっていると言わざるを得ません。「申請」という言葉やタイミングで誤解しないように十分に知識が必要です。

また、新法では、「監理人」は「被監理者の生活状況、監理措置条件の遵守状況その他法務省令で定める事項の報告」をする立場にあるため、「監理人」にどのような立場の者が「監理人」になるかにも左右されますが、不適切な報告になっているときに、在留特別許可の審査に影響することが今の段階から予想できます。したがって、新法では、「監理人」に注視することも大切なポイントになるでしょう。

ところで、「違反調査・違反審査・口頭審理」という語句は入管での退去強制手続きの流れを意味します。
出入国在留管理局は、「申請」書類を受付後、違反調査→違反審査→口頭審理の順で審査開始し​​ます。但し、オーバーステイの場合、実際には退去強制手続きの立件段階から実際の審査はもう開始されていることを理解することも大切なポイントです。

また正規在留申請と同じく、審査では、当事者の証拠、供述、申請人の状況や事情と経歴や、申請人の過去の記録、生計能力、家族構成、過去の在留期間、過去の違反歴、その他、入管が保有する一切の本人の情報、及び、審査中に実施する各種調査や、関係各機関(公的機関と会社等の私的機関への調査や照会の結果)等を考慮します。

もし、当事者の供述、証明書や公証書等、各種文書含め、上掲の審査対象の一切に、当事者の故意・過失を問わず、事実に反するものや不整合があった場合には、不利益に扱われる場合があります。私たちが、入管実務の現場でみるとき、意図的に虚偽の文書を用意されている案件よりは、不整合が生じていることに当事者が気づいていない、というケースのほうが多いです。

また、経験上、日本人側が認識していなくても、外国人本人が勝手に(あるいは、うっかりと)不整合な文書を用意している場合も多いですので、日本の入管や戸籍の知識だけではなく、相手国の制度や書類の知識も学んだ上で、立証資料をきちんと事前に精査しておくことが大切なポイントです。

なお、国名は挙げませんが、一定の国の書類の偽造は、当該外国においては、未だに極めて容易ですので、信用性は低いことも理解しておく必要もあります。さらに、外国発行の文書は、日本とは異なり、パスポート自体の記載が間違っていることもあるほどで、日本とは何もかも違うことも理解が必要です。

結果の告知

審査終了後、申請人に審査の結果を告知します。正規在留申請では、たとえば、配偶者ビザの在留資格変更許可申請では、不許可にしたときは、永住審査部門で、東京ですと不許可の告知室で不許可の理由を告知する扱いです。
しかし、外務省の査証申請では「悪用防止」という理由で配偶者ビザに限らず、何も悪いことをしてなくとも、ビザ全般の拒否理由を言いません。
オーバーステイでの在留特別許可不許可の場合も入管の歴史では理由を説明しないのが「通常」でした。不許可の理由を告知するかどうかは、制度設計次第になります。

改正法では、不許可の理由を告知することが「一応」設計されています。「一応」というのは、なぜかですが、上陸特別許可の実務経験があればわかりますが「特別の事情があるとは認められない」の一言で済ますことが可能なためです。

次に難民認定申請のように審査請求できるかですが、これも制度設計次第ですが、ちなみに正規在留申請では一般に入管の申請では、行政不服審査法が適用除外されてますので、審査請求もできません。ですので、正規在留で適用除外な制度が非正規在留申請で適用というのは、権衡上、制度設計的に採用しにくいと予想されます。

ただ、それはさておき、将来にわたってどのような制度になった場合でも、オーバーステイでの在留特別許可「申請」は、現在、不法滞在していること、難民認定申請での審査請求が実効性には疑義があるケースが多いこと、等の状況から、配偶者ビザの在留資格変更許可申請よりもさらに一層強い理由で、一回で決めなければならない(不許可になっては、もう遅いのがほとんど。)と指摘できます。
なお、改正法では「在留特別許可の申請は、当該外国人に対して退去強制令書が発付された後は、することができない。」といった文言がみられます。

難民認定申請と類似の理解からみると、オーバーステイでの在留特別許可の「申請」が不許可になった時点で、退去強制令書が発付される場面が予想できます。

他方、許可が下りれば、新たな在留資格が付与され、配偶者ビザの場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格の在留カードが交付されます。

在留特別許可された後はどうなるか

ところで、在留特別許可された後、過去のオーバーステイはどうなるのでしょうか。在留特別許可されたあとは、少なくとも不法滞在に関しては、可罰的違法性が無いとの理由で、無罪とする裁判例等もあります。それはさておき、違反の履歴は残りますが、普通の国際結婚夫婦として生活できることになります。永住と帰化は時間はかかりますが、オーバーステイで在留特別許可された方でも、永住と帰化は不可能ではありません。

オーバーステイのペナルティとは?罰則や罪名はどうなるかなどを解説

まとめ

以上のとおり、在留特別許可を「申請」するにも、一定の基準がありますが、在留特別許可を「許可」されるのは、さらに多くのハードルがあると言えるでしょう。改正法でも、入管の巨大裁量権は全く変わりはないので、結果は個別の案件と、その立証活動、及び、審査の担当官によって異なります。
オーバーステイで在留特別許可の申請を希望する場合は、適切な手続きや証拠書類の準備は勿論、「早めの行動」が何よりも大切です。

オーバーステイ時の結婚とは?対処法とビザ申請の重要ポイントを詳しく解説

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弊所では包括的なビザ戦略の立案から具体的なアプローチ、個別ケースにおける過去の経験から未来の見通しまで幅広くケアいたします。専門家による確かなビザ対策で、より安心できる在留特別手続きを実現いたします。どんなご相談もお気軽にお寄せください。

‡記事執筆‡イミグレーション戦略コンサルティングファーム行政書士あさひ東京 代表 古川 峰光

‡記事執筆‡イミグレーション戦略コンサルティングファーム行政書士あさひ東京 代表 古川 峰光

自身が国際結婚し、2万人以上の相談、20年以上の実績を有するイミグレーションコンサルタント兼行政書士。イミグレーション戦略の基盤となる渉外戸籍のマネジメント、在留資格のプログラム、来日後のライフステージに応じたサポート、永住権や国籍までの羅針盤になるようなコンサルテーションを実施。さらには、国際家族を形作ることに関わるアドバイザリー業務をコラボレーション。行政書士あさひ東京は総合的なインバウンド・イミグレーションの真のコンサルティングサービスとしてご提案致します。

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